安全配慮義務

何故、労務監査が必要なのか?リスク回避の必要性は本当にあるのか?

◆安全配慮義務:企業に対して安全への配慮を求める
民法415条(債務不履行による損害賠償)、労働契約法5条(労働者への安全の配慮)
◆不法行為責任:企業及び上司に注意義務を求める
民法709条(不法行為による損害賠償)、民法715条(使用者等の責任による損害賠償)

安全配慮義務:

民法上、作業・作業環境上の安全に対して使用者の配慮が欠けた状態で労働させることは、
使用者の義務に違反します。その結果発生した損害の賠償責任を負うべきとしたのが「安全配慮義務」です。
判例法として確立されてきた⇒ 平成20年3月1日に労働契約法が施行⇒ 
第5条:「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ
労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と規定⇒ 明確化

↓

条文上の「必要な配慮」は、特定の措置を求めているものではなく、
「職種や就業場所などの“具体的な状況に応じて”必要な配慮をしなければならない」ということです。
もちろん労働安全衛生法関連で事業主の講ずべき措置が規定されている場合には、その法令を遵守しなければなりません。

★安全配慮義務には、心身の健康も含まれる:「うつ病」の発症に業務起因性がある場合には労災が認定
⇒ 民事で安全配慮義務違反による損害賠償を請求される!!!

労災認定→ 「業務上」の災害 → 会社の責任が認定
 
裁判での安全配慮義務違反(企業)と注意義務違反(上司及び企業)⇒最近の事案では3割は上司を含めて訴訟!!!

うちの会社は、工場でも建設業や運送業でもないから、労災事故なんて関係ないと思っている社長様! 
うつ病による自殺や「過労死」は年々増加しています。
原因が業務にあるとなれば、損害賠償を請求されるかもしれません!!

−過労死− やっぱり時間管理は大切

・過労死の労災認定が増え始めたころから、長時間労働が問題視されるように
→長時間労働削減の対策として、未払い残業代に対する監督署の調査指導強化
平成11年頃には、大手企業はきちんと管理できているはずという固定観念が覆され、一部上場企業でのサービス残業が
大きく取り上げられました。現在に至るまで、どれだけ多くの企業がサービス残業で不払い分を精算させられてきたでしょうか?
「みなし残業代」制度をきちんとした方法で導入し、不払い残業問題を回避する対策も必要ですが、
それ以上に自殺や過労死などによる企業が受けるダメージは大きなものです。
金銭的な問題だけでなく、社会的なイメージダウンという大きな問題にもつながります!

使用者には労働時間を適正に把握するする責務があります。

管理を怠った場合の企業のデメリット

  • (1)36協定による延長時間を超える可能性⇒ 監督署による是正勧告等
  • (2)割増賃金が未払いとなる⇒ 監督署による是正勧告及び民事訴訟による割増賃金支払請求と賦課金
  • (3)長時間労働による社員の健康被害⇒ 民事訴訟による損害賠償請求等

平成22年5月7日に労働基準法施行規則別表の改正が公布施行 法律上、業務上疾病に脳・心臓疾患が追加 ⇒長時間労働に対する会社の責任大

うつ病対策は必要

・メンタルヘルスという言葉は今や誰でも聞いたことがあると思います。
個人的な理由で、うつ病になることもありますが、業務に起因してうつ病になった場合は、労災認定。
長時間労働が原因で精神障害を起こすケースが多い!
セクハラやいじめが原因となる場合も!
もう会社は知らん顔していられません!

平成23年12月に新たに「心理的負荷による精神障害の認定基準について」が定められました(通達施行)。
最近の労災裁判では、過労死・過労自殺で被災者が圧倒的に勝訴
うつ病自殺の損害賠償請求も原告勝訴の傾向
注意:必ずしも長時間ばかりではない
→1か月の平均残業時間 脳・心臓疾患では60時間未満、精神障害では20時間未満でも労災の認定がされています!!! 

★30年7月に発表された厚生労働省のデータ(労災補償状況)

29年度の「過労死等の労災補償状況」が公共されました。
脳・心臓疾患に関する請求件数は前年度比15件の増
精神障害に関する請求件数は前年度比146件の増
*脳・心臓疾患については、請求件数は840件で、前年度比15件の増となり、 請求件数のうち「運輸業・郵便業」188件、支給決定件数は「運輸業・郵便業」99件が多く、相変わらず運送業関係が上位となっている。
・30年発表:脳・心臓疾患の労災補償状況(PDF)PDF

*精神障害については、請求件数は1,732件で前年度比146件の増(内、未遂を含む自殺件数は前年度比23件増の221件)
1か月平均の時間外労働時間別の支給決定件数は、「20時間未満」が75件で最も多いことが特徴的と思われる。
・30年発表:精神障害の労災補償状況(PDF)PDF

*裁量労働制対象者については、29年度の脳・心臓疾患、精神疾患による労災支給決定件数は4件で、すべて専門業務型裁量労働制対象者。精神障害の支給決定件数は10件で、専門業務型8件、企画業務型2件となっている。
・30年発表:裁量労働制対象者の支給決定件数(PDF)PDF

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