2月13日に「今後の労働時間法制等の在り方について」の報告書が取りまとめられ、厚生労働大臣に建議されました。報告書の主な内容は次の通りです。
*報告書では、「過重労働等の撲滅に向けた監督指導の徹底」、「長時間労働抑制や年次有給休暇取得促進等に向けた労使の自主的取組の促進」を前提として、法制度の整備を行うことが適当としています。
*過重労働防止制度の整備
(1)長時間労働抑制策
①現在、中小企業に対して適用を猶予されている「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率を5割以上とする」労基法第37条第1項ただし書きの規定を平成31年4月より適用する。
②健康確保のための時間外労働に対する監督指導の強化として、36協定の特別条項の様式を定め、特別条項を協定する場合は健康確保措置を定めなければならない。事業主は、健康確保措置の実施状況等に係る書類を作成し、3年間保存する。
③所定外労働の削減に向けた労使の自主的取組を促進する。
(2)健康に配慮した休日確保
労基法35条が必ずしも「法定休日の特定」を求めていないことで、休日振替により月60時間超えの場合の5割以上の割増賃金率適用回避を法制度の潜脱として周知を図る。
(3)労働時間の客観的把握
管理監督者を含む、すべての労働者の客観的な方法による労働時間の把握を省令に規定。併せて管理監督者については、申出ではなく客観的な方法で把握した在社時間等により判断して、医師による面接指導を行う。
(4)年次有給休暇取得促進
使用者の時季指定による年5日以上の年次有給休暇取得を義務付ける(労働者の時季指定・協定による計画的付与の日数が5日以上の場合は義務履行となる)。時季指定に当たり、年休権を有する労働者から時季に関する意見を聴取し、意思を尊重するように努める。使用者に年次有給休暇の管理簿の作成を義務付ける(3年間保存)。
(5)労使の自主的取組促進:労働時間等設定改善法改正
企業単位で設置される労働時間等設定改善企業委員会の位置づけを明確にし、労基法第37条第3項(代替休暇)、第39条第4項(時間単位年休)及び第6項(計画的付与)について、各事業場でこれらの条項を委員会に委ねることを労使協定で定めた場合は、委員の5分の4以上の決議で当該事業場の労使協定に代えることができる。
労働時間等設定改善指針改正:深夜業の回数制限、勤務時間インターバル(前日の就業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息を確保)、朝型の働き方(やむを得ない残業は始業前の朝の時間帯に処理)、テレワーク等
*フレックスタイム制の見直し
(1)清算期間上限を3か月に延長⇒清算期間1か月超、3か月以内のフレックスタイム制
・清算期間内の1か月ごとに1週平均50時間を超えた労働時間については、当該月の割増賃金の支払い対象。
・労使協定の届出必要。
・労働者に各月の労働時間数の実績を通知(努力)
・月60時間超の割増賃金率適用
・月一定の労働時間超で医師の面接指導実施
(2)完全週休2日制の事業場では労使協定により、「所定労働日数×8時間」を法定労働時間の総枠
(3)始業及び終業時刻を労働者の決定に委ね、画一的に特定することは認められない。
*裁量労働制の見直し
(1)企画業務型裁量労働制の新たな枠組
①課題解決型提案営業の業務:取引先企業のニーズを聴取し、社内で新商品開発の企画立案を行い、当該ニーズに応じた課題解決型商品を開発の上、販売する業務
②業務の運営に関する事項の企画立案調査分析を一体的に行う業務:全社レベルの品質管理の取組計画を企画立案するとともに、当該計画に基づく調達や監査の改善を行い、各工場に展開するとともに、その過程で示された意見等をみて、さらなる改善の取組計画を企画立案する業務
・店頭販売やルートセールス等、単純な営業業務や、そうした業務と組み合わせる場合は対象外。
・企画立案調査分析業務と組み合わせる業務が、個別の製造業務や備品等の物品購入業務、庶務経理業務等である場合は対象外。
・長時間労働を行った場合の面接指導、深夜業の回数制限、勤務間インターバル、一定期間における労働時間の上限設定等を省令で規定。
(2)手続きの簡素化
①労使委員会決議の本社一括届出
②6か月後の定期報告、健康・福祉確保措置の実施状況の書類は保存義務
(3)始業・終業の時刻その他の時間配分の決定を労働者に委ねる
*高度プロフェッショナル制度(特定高度専門業務・成果型労働制)創設
成果で評価される働き方:一定の年収要件、職務範囲の明確、高度な職業能力を有する者
を対象に、長時間労働防止措置を講じ、36協定や割増賃金の支払義務等の適用を除外する労働時間制度。
(1)対象業務
金融商品の開発業務、金融商品のディーリング業務、アナリストの業務、コンサルタント業務、研究開発業務等
(2)対象労働者
・使用者と書面による合意に基づき職務範囲が明確に定められている。
・年収1075万円(労基法第14条に基づく告示)以上
・本制度の対象になることで賃金が減少しないこと
(3)健康管理時間、健康・福祉確保措置、面接指導の強化
≪健康管理時間≫
・割増賃金支払の基礎としての労働時間は把握が不要だが、健康確保の観点から健康管理時間(「事業場内に所在していた時間」と「事業場外で業務に従事した労働時間」の合計)を把握し、健康・福祉確保措置を講じる。
・健康管理時間の把握方法は、客観的な方法(タイムカードやパソコンの起動時間等)によるものとし、事業場外で労働する場合に限って自己申告を認める。
≪健康・福祉確保措置≫
・労使委員会で5分の4以上の決議で定める、いずれかの措置を講じる。講じていないときは本制度の適用要件を満たさないものとする。
①24時間について継続した一定時間以上の休息時間を与え、かつ、1か月について深夜業は一定回数以内。
②健康管理時間が1か月又は3か月について一定の時間を超えない。
③4週間を通じ4日以上かつ1年間を通じ104日以上の休日を与える。
≪面接指導の強化≫
・厚生労働省令で定める時間を超えるものに対し、医師の面接指導を義務とする。
・健康管理時間が1週40時間を超えた場合、超えた時間が1か月あたり100時間を超えた労働者は、一律面接指導の対象とする。
・義務違反には罰則。
・事後措置実施も義務。100時間以下でも申出で面接指導実施に努める。
(4)対象労働者の同意
導入要件:労働者ごとに職務記述書等に署名し、職務の内容及び制度の適用についての同意
(5)労使委員会決議
導入要件:労使委員会設置。次の事項を5分の4以上で決議し、行政官庁に届出。
①対象業務の範囲
②対象労働者の範囲
③対象業務に従事する対象労働者の健康管理時間を使用者が把握すること及びその把握の方法
④健康管理時間に基づく健康・福祉確保措置の実施
⑤苦情処理措置の実施
⑥対象労働者の不同意に対する不利益取扱の禁止
(6)法的効果
以上の要件の下、対象業務に就く対象労働者について、労基法第4章:労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定を適用除外とする。
(7)制度の履行確保
届出を行った使用者は、健康・福祉確保措置の実施状況を6か月後に報告。実施状況に関する書類は保存義務。
(8)年少者には適用しない。
*その他
(1)週44時間特例対象事業場の範囲の縮小
(2)過半数代表の選出にあたり「使用者の意向による選出」は手続違反にあたる通達を施行規則に規定することで検討継続等
(3)管理監督者の範囲の徹底と労働時間の客観的把握の徹底
(4)労働者の希望により、メール等による労働条件の明示について検討継続等
*制度改正以外の事項
(1)労働基準監督機関の体制整備
(2)労働基準関係法令の周知の取組等
と以上の内容になります。
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